熊本市東区にある住宅街。穏やかな表情で佇むその家は、真新しいはずなのに、どこか懐かしさを覚える雰囲気を纏っていた。玄関を開けると目に飛び込んで来たのは、縦に長く続く広い土間。施主であるIさん一家の想いを感じるこの空間について尋ねると、答えてくれたのは奥さま。「私の祖母の家にこういう広い土間があったんです。人が来たら気兼ねなくそこに腰かけ、話しをしていく。そんな思い出が懐かしくて。うちにもあんな風な温かい時間を過ごせる空間があったらなぁ、と土間のある家をお願いしたんです」。
Iさん一家が新居を建築したこの場所は、元々は奥さまのご実家が建っていたとか。熊本地震で解体せざるを得ない状況になり、Iさんご夫妻が土地を引き継ぐ形で再建することになったのだという。「職業柄、転勤が多かったため、今までなかなか新居は考えづらかったのですが、震災を機に〝家族の時間をより一層大切にしたい〟と感じるようになり、新居を計画しました」。